「知らない間に離婚届を出されてしまうかもしれない」そんな不安を抱えていませんか?離婚届不受理申出は、配偶者が勝手に離婚届を提出するのを防ぐための公的な制度です。手続きは無料で、役所に申出書を提出するだけで完了します。この記事では、制度の仕組みから申出書の書き方・必要書類・郵送手続きまで、5ステップでわかりやすく解説します。
離婚届不受理申出の制度概要|仕組みと効果を解説

離婚届不受理申出とは、配偶者が本人の意思に反して勝手に離婚届を提出するのを防ぐための制度です。
あらかじめ役所に「不受理申出」をしておくことで、相手が離婚届を提出しても、役所はその届出を受理しません。
日本では協議離婚が離婚全体の約87〜88%を占めており、夫婦の署名・押印があれば原則として離婚届は受理されます。
そのため、署名の偽造や無断での届出といったトラブルが現実に起きており、この制度はそうしたリスクに備えるための重要な手段です。

離婚届不受理申出の定義と法的根拠
離婚届不受理申出の正式名称は「離婚届不受理申出」であり、戸籍法第27条の2に基づく制度です。
法的根拠:戸籍法(e-Gov法令検索)
戸籍法第27条の2第3項では、「何人も、その本籍地の市町村長に対し、自らを届出事件の本人とする縁組等の届出がされた場合であっても、自ら窓口に出頭して届け出たことが確認できないときは当該届出を受理しないよう申し出ることができる」と規定されています。(旧法では本籍地以外の市区町村長への申出も可能でしたが、現行法では申出先は本籍地の市区町村長のみです。)
この規定により、本人が申出をしている間は、相手が届出を提出しても役所は受理できないという法的な効力が生じます。
制度の趣旨は、なりすましや署名偽造など不正な届出から当事者の権利を守ることにあります。
法務省もこの制度の周知を推進しており、不受理申出制度のパンフレットを公式に公開しています。参考:法務省「不受理申出制度」PDF
申出をするとどうなる?届出が止まる仕組み
不受理申出を行った後、配偶者が離婚届を役所に提出しようとすると、窓口担当者が不受理申出の登録を確認し、その場で届出の受理を拒否します。
具体的な流れは以下のとおりです。
- 申出人が役所に不受理申出書を提出・受理される
- 役所の戸籍システムに「不受理申出あり」として登録される
- 配偶者が離婚届を提出しようとする
- 役所が登録を確認し、届出を受理しない
- 届出人(配偶者)に対し不受理である旨が通知される
重要なのは、不受理申出は本籍地の役所だけでなく、日本全国どの市区町村の役所でも提出できるという点です。
システムが全国の戸籍ネットワークと連携しているため、申出後はどの役所に提出されても受理されません。

離婚届以外にも使える?対象となる届出の種類
不受理申出は、離婚届だけに限定された制度ではありません。
不受理申出の対象となる届出の種類は以下のとおりです。
- 婚姻届:望まない結婚の届出を防ぐ
- 離婚届:勝手な離婚届出を防ぐ
- 養子縁組届:無断の養子縁組を防ぐ
- 養子離縁届:無断の縁組解消を防ぐ
- 認知届(裁判による認知を除く):虚偽の認知を防ぐ
法務省の公式資料でも、これら5種類の届出が不受理申出の対象として明記されています。参考:法務省「不受理申出制度」パンフレット
ただし、裁判による認知届・調停や審判による離婚は不受理申出の対象外です。
裁判や調停・審判によって確定した内容は、申出に関係なく法的効力が生じるため注意が必要です。
こんな人が利用している|典型的な3つのケース
離婚届不受理申出を実際に活用しているのは、どのような状況の方でしょうか。典型的な3つのケースを紹介します。
ケース1:離婚自体には応じる意思があるが、条件の合意がまだできていない場合
財産分与・慰謝料・親権・養育費などについて話し合いが続いているため、条件が決まる前に相手が一方的に離婚届を出してしまうことを防ぎたいケースです。
ケース2:離婚を拒否しており、相手の強引な届出を阻止したい場合
配偶者が一方的に「離婚する」と主張し、署名を偽造して届出する恐れがある場合に申出を行います。
ケース3:DVや別居中で、連絡が取れない状況にある場合
DVから逃げて別居中の場合、相手が自分の署名を偽造して届出するリスクがあります。
こうしたケースでは、身を守るための一手として不受理申出が有効です。

離婚届不受理申出のよくある質問(FAQ)

手続きを始める前に、多くの方が抱く疑問をまとめました。
それぞれ簡潔に回答しますので、手続きの判断材料にしてください。
有効期限はありますか?
Q. 不受理申出に有効期限はありますか?
A:有効期限はありません。申出人が取り下げるまで、無期限で効力が継続します。
以前は6ヶ月の有効期限がありましたが、2008年(平成20年)の戸籍法改正により無期限となりました。
申出人が自ら取り下げない限り、ずっと有効です。ただし、死亡や離婚成立など身分関係の変動により自動的に効力が失われる場合もあります。
費用はかかりますか?
Q. 不受理申出に費用はかかりますか?
A:完全無料です。申出に際して、手数料・印紙代などの費用は一切かかりません。
申出書の用紙も役所窓口で無料配布されています。
ただし、郵送で申出を行う場合の切手代・本人確認書類のコピー代・返信用封筒の費用は自己負担となります。
相手(配偶者)に通知されますか?
Q. 申出したことが相手にバレてしまいますか?
A:申出の事実は相手に通知されません。役所から配偶者への通知は行われないため、申出したこと自体は原則として相手に知られません。
ただし、相手が実際に離婚届を提出しようとした際に、役所から受理できない旨を告げられることで、申出の存在を知ることになります。
申出前の段階では、相手に知らせることなく手続きが可能です。
本人以外(代理人)でも申出できますか?
Q. 体調不良や遠方居住で役所に行けない場合、代理人は使えますか?
A:原則として本人が直接申出する必要があります。不受理申出は「本人の意思確認」が非常に重要なため、代理人による申出は認められていません。
ただし、疾病その他やむを得ない事由で来庁できない場合に限り、郵送による申出が認められています。
京都市の公式ページでも、「原則郵送不可、ただしやむを得ない場合は理由を明らかにして本籍地への郵送申出が可能」と案内されています。参考:京都市「不受理申出」
取り下げはどうすればいい?
Q. 話し合いがまとまった場合、申出の取り下げ方法を教えてください。
A:役所の窓口で「不受理申出取下書」を提出するだけで取り下げできます。
取り下げ手続きも無料で、本籍地または届出地の役所窓口で行えます。
取り下げには本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカードなど)が必要です。
取り下げをしないまま離婚届を提出しようとしても受理されないため、離婚を合意したら速やかに取り下げを行いましょう。
離婚届不受理申出の手続き方法|5ステップで完了

不受理申出の手続きは、5つのステップで完結します。
費用は無料で、特別な資格も不要です。順を追って確認しましょう。

ステップ1|申出書を入手する(ダウンロード先一覧)
申出書(離婚届不受理申出書)は、以下の方法で入手できます。
- 役所窓口での受け取り:市区町村の戸籍担当窓口で無料配布されています
- 法務省公式サイトからのダウンロード:法務省「各種届出書について」から入手可能
- 各市区町村の公式サイト:自治体によってはPDF形式でダウンロード可能
用紙のサイズはA4判が一般的です。
急いでいる場合は役所窓口で直接受け取るのが最も確実です。窓口では記入方法の説明も受けられます。
ステップ2|申出書の書き方と記入例
申出書には以下の項目を記入します。
| 記入項目 | 記入内容の例 |
|---|---|
| 申出人の氏名 | 山田 花子(フルネーム) |
| 申出人の生年月日 | 昭和60年4月1日 |
| 申出人の本籍 | 東京都新宿区〇〇町1番地 |
| 筆頭者の氏名 | 山田 太郎 |
| 不受理を求める届出の種類 | 離婚届(チェックボックスにチェック) |
| 申出年月日 | 令和8年3月5日 |
記入上の注意点として、署名は必ず自筆で行い、印鑑は不要な場合がほとんどですが、自治体によって異なることがあるため確認が必要です。
不受理を求める届出の種類は複数選択が可能なため、必要に応じて婚姻届や養子縁組届なども合わせてチェックすることをおすすめします。
ステップ3|必要書類を準備する
申出に必要な書類は非常にシンプルです。
- 離婚届不受理申出書(記入済みのもの)
- 本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカード・パスポートなど顔写真付きのもの1点、または健康保険証+住民票など顔写真なしのもの2点)
戸籍謄本や印鑑証明書などの追加書類は、原則として不要です。
ただし、自治体によって求められる書類が異なる場合があるため、事前に提出先の役所に確認しておくと安心です。
ステップ4|役所に提出する(提出先・受付時間)
申出書は以下のいずれかの役所に提出できます。
- 本籍地の市区町村役所
- 現住所の市区町村役所
- 一時滞在地の市区町村役所
本籍地以外の役所でも申出できますが、全国の戸籍システムに連携して登録されるため、どこの役所でも有効です。
受付時間は通常の窓口業務時間(平日8:30〜17:15など)です。
土日祝日や夜間の時間外窓口での受付については、次の見出しで詳しく説明します。
ステップ5|受理されたことを確認する
申出後、役所の窓口担当者から「不受理申出を受け付けました」という確認を口頭または書面で受けることができます。
受付の証明として、窓口で受付番号や受付済みスタンプの押印を求めることも可能な場合があります。
申出が正しく登録されているか不安な場合は、後日役所の戸籍担当窓口に問い合わせることで確認できます。
また、郵送で申出した場合は、郵便が役所に到達し、役所が申出書を受理・処理した時点から効力が発生します(役所からの通知が申出人に届くまでの間ではありません)。必ず到達・受理を確認しましょう。
離婚届不受理申出を郵送で行う方法

遠方に住んでいる・体調不良などで役所に直接出向けない場合、一定の条件を満たせば郵送での申出が認められています。
ただし、すべての自治体が郵送を受け付けているわけではないため、事前確認が必須です。
郵送手続きの流れと必要なもの
郵送で申出を行う場合の手順は以下のとおりです。
- 申出書をダウンロードまたは役所から郵送してもらい、必要事項を記入する
- 本人確認書類のコピーを準備する
- 郵送不可の場合は、来庁できない理由(疾病など)を説明する書類も同封する
- 返信用封筒(切手を貼ったもの)を同封する
- 本籍地の市区町村役所の戸籍担当宛に郵送する
郵送で申出できるのは、原則として本籍地の役所のみです。現住所地の役所への郵送は対応していない場合があります。
同封する書類のチェックリスト:
- □ 記入済みの離婚届不受理申出書
- □ 本人確認書類のコピー(両面)
- □ 来庁できない理由を記した書面(疾病等の場合)
- □ 返信用封筒(切手貼付済み)
郵送時の注意点|届くまでは未受理状態
郵送申出の最大のリスクは「タイムラグ」です。
郵便が役所に届き、担当者が受理・処理するまでの間は、不受理申出の効力は発生していません。
つまり、郵送中に相手が離婚届を提出した場合、受理されてしまう可能性があります。
緊急性が高い場合は、郵送ではなく速達・書留郵便を使用するか、役所窓口に直接出向くことを強く推奨します。
また、郵送後は役所に電話確認を行い、受理されたことを口頭で確認しておきましょう。
土日祝日でも離婚届不受理申出はできる?

離婚届そのものは24時間・365日(土日祝日・夜間)に提出できますが、不受理申出の受け付けは、原則として平日の窓口時間内(8:30〜17:15ごろ)のみとなっています。
これが大きな注意点です。
一部の役所では、土曜日に戸籍担当窓口を開設している場合がありますが、対応可能な業務が限られるケースも多く、不受理申出を扱うかどうかは自治体によって異なります。
「週明けに申出しよう」と思っていると、週末の間に相手が届出を提出してしまうリスクがあります。
不受理申出を急いでいる場合は、平日中に速やかに手続きを行うことが重要です。
土日に気づいた場合は、月曜日の開庁時間(8:30〜)を待って、開庁と同時に手続きを行いましょう。
緊急の場合は、弁護士に相談することで一時的な対策(仮処分申請など)について助言を受けられる場合もあります。
離婚届不受理申出の注意点とデメリット

不受理申出は有効な制度ですが、知っておくべき注意点やデメリットも存在します。
事前にリスクを理解したうえで利用することが重要です。

申出しても防げないケース(裁判離婚など)
不受理申出では防ぐことができないケースがあります。
防げないケースの代表例:
- 裁判離婚(判決離婚):家庭裁判所の判決によって離婚が確定した場合
- 調停離婚:家庭裁判所の調停で成立した離婚
- 審判離婚:家庭裁判所の審判による離婚
これらは司法手続きによって確定したものであり、役所への届出は確定した内容を登録する手続きに過ぎないため、不受理申出の対象外となります。
不受理申出が有効なのは、あくまで「協議離婚届」の提出を防ぐ場合のみです。
取り下げを忘れると自分の届出も止まる
不受理申出は「申出人本人が提出した届出」も受理されなくなるという点に注意が必要です。
例えば、話し合いが成立して離婚に合意したにもかかわらず、不受理申出を取り下げずに離婚届を提出しても、役所はその届出を受理しません。
離婚の合意後は、必ず先に不受理申出の取り下げを行ってから、離婚届を提出するようにしてください。
取り下げは役所の窓口で「不受理申出取下書」を提出するだけで完了します。
届出拒否が相手に伝わるリスク
前述のとおり、申出の事実は相手に通知されませんが、相手が実際に離婚届を提出しようとした場合に、役所の窓口で「不受理申出が出されているため受理できない」と告げられます。
これにより、相手は不受理申出の存在を知ることになります。
相手がこの事実を知ったことで、話し合いの場が設けられたり、逆に関係が悪化したりするケースもあります。
不受理申出はあくまで「届出を止める」ための手段であり、根本的な問題解決(離婚条件の合意、関係の改善など)は別途進める必要があります。
すでに届出が受理されてしまった場合の対処法
不受理申出をする前に、すでに相手が離婚届を提出・受理されてしまった場合はどうすればよいでしょうか。
この場合、不受理申出はもはや効果を持ちません。代わりに以下の対処法を検討してください。
- 離婚無効確認の訴え:家庭裁判所に対し、離婚の無効を求める訴訟を提起する
- 証拠の保全:署名の偽造を示す筆跡鑑定などの証拠を集める
- 弁護士への緊急相談:速やかに弁護士に相談し、適切な法的対応を取る
署名が偽造された場合は、有印私文書偽造・同行使罪(刑法159条・161条)に該当する可能性があり、刑事告訴も選択肢のひとつです。
法的根拠:刑法(e-Gov法令検索)
離婚届不受理申出で弁護士への相談が必要なケース

不受理申出の手続きそのものは難しくありませんが、離婚問題が絡む場合はケースによって弁護士への相談が有効です。
自分で対応できるケースと専門家に頼るべきケースを整理します。
自分で手続きできるケース
以下のような状況であれば、弁護士に頼らず自分で手続きを完結できます。
- 勝手な届出を防ぐためだけに申出したい(条件等はこれから話し合う)
- 相手との直接交渉が可能な状態にある
- DVなどの身の危険がない
- 急を要する状況ではない
不受理申出そのものは無料・簡単な手続きであり、多くの方が自分で完結できます。
専門家に相談すべき3つの状況
一方、次の3つの状況に該当する場合は、早めに弁護士への相談を検討してください。
- すでに離婚届が受理されてしまった場合:離婚無効確認の訴えを起こすには専門的な法的対応が必要です。時効・証拠保全の観点からも迅速に動く必要があります。
- DV・ハラスメント被害がある場合:身の安全を守りながら手続きを進めるためには、弁護士や支援機関のサポートが不可欠です。
- 財産・親権・養育費などで争いがある場合:条件交渉が複雑化している場合や、相手方が弁護士を立てている場合は、自分も弁護士に依頼することで対等な立場で交渉できます。
無料で相談できる窓口一覧
弁護士費用が心配な方も、まずは無料相談から始めることができます。
| 窓口名 | 内容 | 費用 |
|---|---|---|
| 法テラス(日本司法支援センター) | 電話・面談による無料法律相談 | 無料(収入要件あり) |
| 各都道府県弁護士会の法律相談センター | 30分相談 | 5,500円程度(初回無料の場合もあり) |
| 市区町村の法律相談(自治体主催) | 弁護士による面談相談 | 無料 |
| 配偶者暴力相談支援センター | DVに関する相談・支援 | 無料 |
法テラス:法テラス公式サイト
こちらの動画でも、弁護士による不受理申出の解説が参考になります。
まとめ|今日できるアクションチェックリスト

離婚届不受理申出は、配偶者による無断の離婚届提出を防ぐための、無料・簡単・即日対応可能な制度です。
「もしかしたら勝手に出されるかも」と少しでも不安を感じたら、早めに手続きしておくことをおすすめします。
今日できるアクションチェックリスト
- □ 申出書を入手する:役所窓口またはe-Gov・法務省サイトからダウンロード
- □ 本人確認書類を準備する:運転免許証・マイナンバーカードなど
- □ 平日に役所へ提出する:時間は業務時間内(8:30〜17:15ごろ)に行く
- □ 受理確認をする:窓口で受理を確認し、記録を残す
- □ 取り下げのタイミングを把握する:離婚合意後は先に取り下げを行う
- □ 複雑な状況なら弁護士・法テラスに相談する:無料相談を活用する
制度を正しく理解し、自分の権利をしっかりと守りましょう。


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