「定年を機にもう限界だ」「子どもが独立した今、この人と一緒にいる必要はない」——60歳前後で離婚を真剣に考え始める方は少なくありません。しかし、熟年離婚には財産分与・年金分割・退職金の扱いなど、若い世代にはない複雑な問題が山積しています。この記事では、60歳で離婚を検討している方に向けて、お金の基本ルールから手続きの流れ、離婚後の生活設計まで、必要な情報をすべて網羅して解説します。後悔しない選択をするために、ぜひ最後までお読みください。
60歳の離婚で押さえるべきお金の基本ルール

60歳での離婚は、30代・40代の離婚とは比較にならないほど、お金にまつわる問題が複雑かつ高額になります。
長年の結婚生活で積み上げてきた財産(不動産・預貯金・株式・退職金・年金など)をどう分けるかが、離婚後の生活水準を大きく左右するからです。
主に関係するお金の項目は以下の4つです。
- 財産分与:婚姻中に築いた共有財産を分ける
- 退職金:財産分与の対象となる場合がある
- 年金分割:厚生年金の標準報酬を分け合う制度
- 慰謝料:不貞行為やDVなど有責行為がある場合に発生
それぞれの仕組みと注意点を順に確認していきましょう。
財産分与の基本|原則2分の1だが注意点もある
財産分与とは、婚姻期間中に夫婦が共同で築いた財産(共有財産)を離婚時に分配する制度です。
原則として夫婦それぞれが2分の1ずつ受け取る「2分の1ルール」が適用されます。
対象となる財産の例は次のとおりです。
- 婚姻中に取得した不動産(自宅など)
- 婚姻中に貯めた預貯金・現金
- 婚姻中に購入した株式・投資信託
- 婚姻中に積み立てた生命保険の解約返戻金
- 退職金(一定条件あり)・企業年金
一方、特有財産(婚姻前から持っていた財産や相続・贈与で得た財産)は分与対象外です。
注意点として、専業主婦(夫)であっても、家事・育児による貢献が認められるため、原則2分の1が適用されます。
ただし、一方が特別な才能や努力によって多大な財産形成に貢献した場合(例:会社経営者・医師・プロスポーツ選手など)は、2分の1を超える分与が認められることもあります。
財産分与の請求期限は、離婚日によって異なります。2026年3月31日までに離婚が成立した場合は原則2年以内、2026年4月1日以降に離婚が成立した場合は原則5年以内です(経過措置の適用があり得るため、個別事情は専門家に確認してください)(民法)。
退職金は財産分与の対象になるのか
60歳の離婚で多くの方が気にするのが退職金の扱いです。結論から言えば、婚姻期間中に対応する部分については財産分与の対象になります。
退職金はすでに受け取っている場合と、まだ受け取っていない(将来支払われる予定の)場合で対応が異なります。
| 状況 | 財産分与への影響 |
|---|---|
| すでに退職金を受け取っている | 婚姻期間に対応する部分は分与対象(受取済みの預貯金等として扱う) |
| 将来、退職金の支給が見込まれる(受給可能性が高い) | 将来の退職金も分与対象として認められる場合がある(支給の確実性・金額の見込み等による) |
| 退職金の支給が不確実(勤務先規程が不明・勤続が浅い等) | 将来の退職金は不確実として対象外になる場合もある |
計算式の例:退職金全体 × (婚姻期間 ÷ 勤続年数)× 1/2 = 分与額
たとえば、退職金が2,000万円、勤続年数40年のうち婚姻期間が35年の場合、2,000万円 × 35/40 × 1/2 = 875万円が分与額の目安となります。
退職金は高額になるため、見落とさずに交渉に含めることが重要です。
年金分割の仕組み|受け取れる金額と手続き期限
年金分割とは、婚姻期間中の厚生年金(共済年金)の保険料納付記録(標準報酬)を夫婦間で分け合い、それぞれの老後の年金額に反映させる制度です。
年金分割には「合意分割」と「3号分割」の2種類があります。
- 合意分割:夫婦の合意(または裁判所の決定)により、按分割合を最大0.5(50%)まで決める方式。婚姻期間全体の厚生年金が対象。
- 3号分割:2008年4月以降の婚姻期間について、第3号被保険者(専業主婦など)が相手の標準報酬の半分を取得できる制度。相手の同意不要。


重要なのは、年金分割はあくまで厚生年金(標準報酬記録)の分割であり、国民年金(基礎年金)は分割されない点です。
手続き期限は、離婚日によって異なります。2026年3月31日までに離婚が成立した場合は原則2年以内、2026年4月1日以降に離婚が成立した場合は原則5年以内に、年金事務所または共済組合に請求する必要があります(期限を過ぎると請求できなくなるため注意してください)。
受け取れる金額は夫婦の収入差・婚姻期間・按分割合によって異なりますが、専業主婦が50%の按分割合で分割した場合、月数万円程度の年金増額になるケースが多いです。
詳細は日本年金機構の公式ページで確認できます。
慰謝料が発生するケース・しないケース|相場と請求条件
慰謝料は相手の有責行為(不法行為)によって精神的苦痛を受けた場合に請求できる損害賠償金です。
慰謝料が発生する主なケースは以下のとおりです。
- 不貞行為(浮気・不倫):最も一般的な慰謝料請求原因
- DV(身体的暴力):継続的な暴力行為
- モラハラ(精神的暴力):継続的な言葉による侮辱・支配行為
- 悪意の遺棄:生活費を渡さない・家を出て行くなど
一方、性格の不一致だけでは慰謝料は発生しません。双方に明確な有責行為がない「性格の不一致による離婚」では、慰謝料の請求根拠がないためです。
慰謝料の相場は次のとおりです。
- 不貞行為:50万〜300万円程度(婚姻期間・精神的被害の程度・相手の収入による)
- DV・モラハラ:50万〜200万円程度
- 悪意の遺棄:50万〜200万円程度
慰謝料を有利に請求するためには、証拠が不可欠です。後述のステップ3で詳しく解説します。
60歳で離婚するメリット・デメリットを徹底比較

「離婚したい」という気持ちがあっても、60歳という年齢での離婚は人生に大きな影響を与えます。
感情だけで判断するのではなく、メリットとデメリットを客観的に整理した上で決断することが大切です。
60歳で離婚するメリット|残りの人生を自分らしく生きる
60歳からの平均余命は、男性23.63年、女性28.92年(厚生労働省「令和6(2024)年簡易生命表」より)です。
これだけの年数が残っているからこそ、離婚によって得られるメリットは十分に意味があります。
- 精神的ストレスからの解放:長年我慢してきた抑圧・緊張・恐怖から解放され、心穏やかな生活を取り戻せる
- 自分のペースで生きられる:食事・就寝・外出・趣味など、すべてを自分の意思で決められる自由を得る
- 経済的な自立意識の向上:お金の管理を自分で行うことで、主体的な生活設計が可能になる
- 子ども・友人との関係再構築:相手への気遣いがなくなることで、人間関係を自由に広げられる
- 新たな出会いや再婚の可能性:60代でも再婚や新しいパートナーシップを築く方は増えている
実際に熟年離婚後の生活をYouTubeで発信している方も多く、離婚後に充実した日々を送る姿が多く見られます。
https://www.youtube.com/watch?v=CDslgofPuY8&vl=ja60歳で離婚するデメリット|経済面・精神面のリスク
メリットがある一方で、60歳での離婚には深刻なリスクも伴います。特に経済的な問題は慎重に考える必要があります。
- 収入の激減:配偶者の収入がなくなり、年金だけでは生活費が不足するケースが多い(特に専業主婦の場合)
- 住まい問題:持ち家を出なければならない・賃貸の審査が通りにくいなどの問題が生じる
- 孤独感・孤立リスク:一人暮らしになることで孤独を感じやすく、うつや健康悪化につながる可能性がある
- 医療・介護の不安:病気や介護が必要になったとき、頼れる配偶者がいなくなる
- 手続きの煩雑さ:財産分与・年金分割・各種名義変更など、多くの手続きが一度に発生する
- 子ども・親族との関係への影響:成人した子どもでも、親の離婚に動揺・反対することがある
特に専業主婦の方は、離婚後の収入が年金分割による受給額に限られる場合もあるため、事前の生活費シミュレーションが必須です。
離婚すべきか迷ったときの判断基準
「離婚したい気持ちはあるが、本当にすべきか迷っている」という方は、以下の判断基準を参考にしてください。
離婚を前向きに検討すべきサイン
- DV・モラハラ・不貞など明確な有責行為がある
- 何年も話し合いを試みたが改善が見られない
- 一緒にいること自体が心身の健康を害している
- 離婚後の経済的見通しが立っている
- 子どもが独立して直接の影響がない
いったん立ち止まって検討すべきサイン
- 離婚後の収入・住まいのめどが全く立っていない
- 「離婚したいが寂しい」という感情的な揺れが大きい
- 相手が変わる可能性が残っている(カウンセリング等未経験)
- 体調・精神状態が悪く、冷静な判断ができていない
迷っているならまず弁護士や離婚カウンセラーへの無料相談を活用し、第三者の視点を得ることをお勧めします。
60歳からの離婚準備|後悔しないための7ステップ

離婚を決意したら、感情的に動くのではなく段階的に準備を進めることが後悔しない離婚への近道です。
以下の7つのステップを順番に確認しながら進めていきましょう。
ステップ1|離婚後の生活費をシミュレーションする
最初に行うべきは離婚後の生活費の具体的な試算です。「なんとかなる」という感覚で進めると、後で生活苦に陥るリスクがあります。
試算の手順は以下のとおりです。
- 月々の支出を洗い出す:家賃(または住居費)・食費・光熱費・通信費・医療費・娯楽費など。単身世帯の生活費は月約15〜20万円が目安。
- 収入を確認する:自分の年金見込み額(ねんきんネットで確認)+年金分割で増える金額+就労収入(パート等)+財産分与で受け取る一時金。
- 収支のギャップを確認する:収入が支出を下回る場合、就労・資産運用・生活費の見直しのいずれかで対応策を立てる。
年金の見込み額はねんきんネット(日本年金機構)で無料で確認できます。
ステップ2|夫婦の財産を漏れなく把握する
財産分与を有利に進めるためには、夫婦の共有財産を離婚前に漏れなくリストアップすることが不可欠です。
見落としがちな財産の例を挙げます。
- 配偶者名義の銀行口座・証券口座
- 企業型確定拠出年金(iDeCo含む)
- 生命保険の解約返戻金
- 退職金・退職年金
- ゴルフ会員権・リゾート会員権
- 配偶者が隠している可能性のある口座(財産調査が必要なケース)
相手が財産を隠している疑いがある場合は、弁護士に依頼して弁護士会照会(23条照会)や裁判所の調査嘱託を活用することができます。
離婚前に可能な限り、通帳のコピー・残高証明書・不動産の登記情報などを収集しておきましょう。
ステップ3|必要な証拠を集める(不貞・モラハラ等)
有責行為を理由に慰謝料請求や離婚調停・裁判を進める場合は、証拠の有無が結果を大きく左右します。
証拠として有効なものの例は以下のとおりです。
- 不貞行為の証拠:浮気相手とのLINE・メール・ホテルの領収書・探偵事務所の調査報告書(写真含む)
- DVの証拠:怪我の診断書・写真・警察への被害届の控え・シェルターへの避難記録
- モラハラの証拠:暴言の録音・録画・日記(日付・内容を記録)・第三者の証言
- 悪意の遺棄の証拠:生活費の不払いを示す通帳履歴・相手の別居事実を示す証拠
証拠は離婚を切り出す前に収集しておくのが鉄則です。離婚を告げた後は、相手が証拠を隠滅・削除する可能性があります。
なお、不法な方法(GPSの無断設置・盗聴等)で入手した証拠は証拠能力を否定される場合があるため、収集方法についても弁護士に相談することをお勧めします。
ステップ4|別居するかどうかを決める
離婚協議を始める前に、別居するかどうかを判断することが重要です。
別居のメリットは以下のとおりです。
- DV・モラハラから身を守れる
- 別居期間が長くなるほど「婚姻関係の破綻」の証拠として機能し、離婚調停・裁判で有利になる
- 精神的に落ち着いた状態で交渉に臨める
別居のデメリットとして注意すべき点もあります。
- 住居費が二重にかかる
- 婚姻費用(生活費)を請求できる権利があるが、相手が任意に払わない場合は調停申立が必要
- 持ち家から出た側は「占有」を失い、後の財産分与交渉で不利になる可能性がある
DV・モラハラがある場合は安全を最優先し、すぐに別居・シェルター利用を検討してください。内閣府DV相談ナビ(#8008)に電話すると最寄りの相談窓口につながります。
ステップ5|離婚の切り出し方とベストなタイミング
離婚を切り出すタイミングと方法は、その後の協議の行方に影響します。
避けるべきタイミング
- 相手が感情的になりやすい場面(帰宅直後・深夜・飲酒時)
- 財産・証拠の収集が不十分な段階
- 子どもや孫の行事が重なる時期
適切なタイミングと方法
- 証拠収集・生活費試算・弁護士相談が完了した後
- 落ち着いた雰囲気・二人だけの場所で、感情的にならず事実を伝える
- DV・モラハラがある場合は一人で切り出さず弁護士に代理交渉を依頼する
「定年退職後」は一つの区切りとして離婚を切り出しやすいタイミングですが、退職金が支払われるタイミングを確認してから動くことで、分与交渉を有利に進められます。
ステップ6|協議・調停・裁判の流れを理解する
離婚の手続きには大きく3つの方法があります。
| 方法 | 概要 | 期間目安 |
|---|---|---|
| 協議離婚 | 夫婦間の話し合いで離婚条件を決め、離婚届を提出する | 合意できれば数日〜数か月 |
| 調停離婚 | 家庭裁判所の調停委員が仲介して話し合う | 半年〜1年程度 |
| 裁判離婚 | 話し合いが決裂した場合に裁判所が判決を下す | 1年〜3年以上 |
日本ではまず協議→まとまらなければ調停→それでも決裂なら裁判という流れが基本です。裁判を起こす前に必ず調停を経なければならない「調停前置主義」が採られています(家事事件手続法第257条)。
相手が離婚に応じない・条件が折り合わない場合は早めに弁護士に相談し、調停申立を検討しましょう。
ステップ7|離婚届と同時に必要な届出一覧
離婚届の提出と同時に、または提出後に速やかに行うべき行政手続きが多数あります。漏れなく確認しておきましょう。
- 離婚届の提出(本籍地または居住地の市区町村窓口)
- 氏・戸籍の変更届:旧姓に戻る場合は「離婚の際に称していた氏を称する届」の提出(3か月以内)
- 住民票の変更:引越しを伴う場合は転出・転入届
- 健康保険の切り替え:配偶者の扶養から外れた場合、国民健康保険への加入または就職先の健保加入(14日以内)
- 年金の切り替え:第3号被保険者から第1号被保険者への変更手続き
- 年金分割の請求(離婚日が2026年3月31日まで:原則2年以内/2026年4月1日以降:原則5年以内)
- 運転免許証・パスポートの氏名変更
- 銀行口座・クレジットカードの名義変更
- 不動産の登記名義変更(法務局)
特に健康保険と年金の手続きは期限があるため最優先で対応してください。
60歳で離婚した後の生活設計|新しい人生の築き方

離婚後の生活を安定させるためには、住まい・収入・健康保険・介護の4つの柱について具体的な計画を立てることが重要です。
離婚後の生活再建は決して簡単ではありませんが、事前にしっかり準備すれば新しい人生を充実させることは十分可能です。
住まいの選択肢|持ち家を取得するか賃貸に移るか
離婚後の住まいについては、大きく「持ち家を取得する」「賃貸に移る」「実家に戻る」の3つの選択肢があります。
| 選択肢 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 持ち家を財産分与で取得 | 住み慣れた環境に留まれる・家賃不要 | 維持費・固定資産税の負担・売却しにくい場合もある |
| 持ち家を売却して現金分与 | まとまったお金が手に入る | 引越し・新居探しが必要 |
| 賃貸に移る | 身軽に住み替え可能・老後施設への移行がしやすい | 家賃が老後の負担になる・審査が厳しい場合がある |
60代・シニア単身の賃貸審査は厳しい場合があります。UR賃貸住宅(都市再生機構)は保証人不要・礼金なしで入居しやすい選択肢の一つです(UR賃貸住宅公式サイト)。
持ち家を取得する場合、名義を自分に変更する登記(所有権移転登記)の手続きが必要です。登録免許税は原則として固定資産税評価額×2%(20/1000)で、これに加えて司法書士報酬・必要書類の取得費用などがかかります(費用総額は物件・依頼先により変動します)。
収入の確保|年金だけで足りない場合の現実的な対策
60代単身者の生活費は月約15〜20万円が目安ですが、年金分割後の受給額がこれを下回るケースは珍しくありません。
年金だけで生活費が足りない場合の対策を挙げます。
- 就労継続・再就職:60代でもパート・アルバイト・再雇用制度を活用して収入を得る。ハローワークの「生涯現役支援窓口」を活用できる。
- 年金受給開始の繰下げ:65歳からの年金を最大75歳まで繰り下げると、1か月ごとに0.7%増額(最大84%増)。
- 財産分与で受け取った資産の活用:不動産の賃貸収入・投資信託の分配金など。
- 生活保護の利用:資産・収入が最低生活費を下回る場合は受給資格がある。居住する市区町村の福祉事務所へ相談。
年金繰下げ制度の詳細は日本年金機構の繰下げ受給ページでご確認ください。
健康保険・介護への備え|一人暮らしのリスク対策
離婚後の一人暮らしで最も不安になりやすいのが、病気・介護になったときの対応です。
健康保険について
- 配偶者の扶養から外れた場合は、国民健康保険または任意継続健康保険(退職後2年間)への加入が必要。
- 75歳以上になると自動的に後期高齢者医療制度に移行する。
介護への備えについて
- 40歳以上は介護保険料を負担し、要介護認定を受ければ介護サービスを利用できる。
- 一人暮らしで介護が必要になった場合は、地域包括支援センターが相談窓口となる(厚生労働省地域包括支援センターの概要)。
- 老後に備えて見守りサービス・緊急通報サービスの活用も有効。
一人暮らしのリスクを最小化するために、離婚前から地域のコミュニティや支援機関とのつながりを意識的に作ることが大切です。
60代の離婚は珍しくない|データで見る熟年離婚の実態

「60歳で離婚するのは世間的に珍しいのでは」と感じる方もいるかもしれませんが、実際には熟年離婚は年々増加しており、社会的に認知された選択肢の一つとなっています。
60代の離婚件数と推移|統計データが示す増加傾向
厚生労働省の人口動態統計によると、同居期間20年以上の夫婦の離婚(いわゆる熟年離婚)は、1990年代以降に大幅に増加しました。
2000年代初頭に年金分割制度の導入が議論され始めた頃から、専業主婦を中心に「定年後の離婚」を考える女性が増加したと言われています。
現在では離婚全体の約2割が同居期間10年以上の夫婦による熟年離婚とされています。
また、60代の単身女性・男性の人口も年々増加しており、離婚後の一人暮らしをサポートするサービスや情報も充実してきています。

なぜ60歳で離婚を決意するのか|5つの背景と理由
60歳前後で離婚を決意する背景には、以下のような共通した理由が見られます。
- 定年退職による生活スタイルの変化:夫が退職して家にいる時間が増え、ストレスや価値観の違いが顕在化する。「濡れ落ち葉症候群」とも呼ばれる。
- 子どもの独立(空の巣症候群):子育てという共通の目的が終わり、夫婦としての関係を見直すきっかけになる。
- 長年のDV・モラハラへの限界:子どもへの影響を恐れて我慢してきたが、子どもの独立を機に行動に移す。
- 配偶者の不貞・問題行動の発覚:退職後に発覚するケースや、長年隠されていた事実が明らかになるケース。
- 残りの人生を自分らしく生きたいという願望:人生100年時代において、60歳でも20〜30年の生が残ることへの意識変化。
男女で異なる離婚後の現実|後悔する人・しない人の違い
熟年離婚後の現実は、男女で大きく異なる傾向があります。
| 離婚後の傾向 | 後悔しやすいパターン | |
|---|---|---|
| 女性 | 精神的開放感を感じやすい。ただし経済的不安を抱えるケースが多い。 | 経済的見通しが甘かった・孤独感が想像以上だった |
| 男性 | 家事・食事・人間関係の管理能力が低く、生活が急に悪化しやすい。孤独死リスクも高い。 | 妻の家事労働の重要性に気づかなかった・孤立した |
後悔しない人の共通点としては、①離婚前に十分な準備をした ②新しいコミュニティ・趣味・仕事を見つけた ③定期的に子どもや友人と交流を維持したという3点が挙げられます。
60歳の離婚で弁護士に相談すべきケースと費用の目安

熟年離婚は財産・年金・退職金・慰謝料など、扱う金額が大きくなりやすいため、弁護士への相談・依頼が有効なケースが多いです。
費用が気になる方のために、無料相談窓口も含めて解説します。
こんな場合は弁護士への依頼を検討すべき
以下のケースに当てはまる方は、弁護士への依頼を強く検討してください。
- 相手が離婚に応じない:法的手続き(調停・裁判)が必要になる可能性が高い
- 財産の多い夫婦・不動産がある:財産分与の交渉・登記手続きで専門知識が必要
- DVやモラハラがある:自分での交渉が危険。弁護士が代理人として交渉する
- 不貞行為があり慰謝料を請求したい:証拠収集・請求額の交渉で弁護士のサポートが有効
- 退職金・年金分割で揉めている:計算や交渉に専門知識が必要
- 相手に弁護士がついている:自分だけ弁護士なしでは圧倒的に不利
弁護士費用の相場と内訳|着手金・成功報酬の目安
弁護士費用の主な内訳は以下のとおりです。
| 費用の種類 | 相場 | 概要 |
|---|---|---|
| 相談料 | 0〜1万円/1時間 | 初回無料の事務所も多い |
| 着手金(協議離婚) | 10〜30万円程度 | 依頼時に支払う費用 |
| 着手金(調停・裁判) | 20〜50万円程度 | 調停・裁判になると高くなる |
| 成功報酬 | 経済的利益の10〜20%程度 | 財産分与・慰謝料が取れた場合に発生 |
総額では50〜150万円前後になるケースが多いですが、財産分与で数百万〜数千万円を獲得できるケースでは費用対効果が十分に見合います。
費用が心配な方は、法テラスの審査を通過すれば弁護士費用の立替制度を利用できます。
無料で相談できる窓口一覧|法テラス・自治体・弁護士会
費用をかけずに相談できる公的窓口を活用しましょう。
- 法テラス(日本司法支援センター):収入・資産が一定以下の方は弁護士費用の立替制度あり。電話:0570-078374。法テラス公式サイト
- 各市区町村の無料法律相談:自治体が実施する法律相談(弁護士が対応)。役所の窓口または公式ウェブサイトで確認。
- 弁護士会の法律相談センター:各都道府県の弁護士会が実施。30分5,500円(税込)程度。初回無料のケースもあり。
- 配偶者暴力相談支援センター:DV被害がある場合。内閣府DV相談窓口
60歳の離婚でよくある質問

60歳の離婚について、読者から特に多く寄せられる疑問をQ&A形式で解説します。
Q. 専業主婦でも財産分与は受けられますか?
A: はい、受けられます。専業主婦(夫)であっても、家事・育児・配偶者の仕事のサポートによって家庭に貢献したと認められるため、原則として婚姻中に築いた共有財産の2分の1を請求する権利があります。収入がないことを理由に財産分与を拒否することはできません。長年専業主婦だった方は特に、財産の全体像を把握して請求漏れがないようにすることが重要です。
Q. 年金分割をしないと離婚届は出せませんか?
A: 年金分割の手続きは離婚後に行うものであり、離婚届の提出要件ではありません。離婚届は年金分割なしでも提出できます。ただし、年金分割の請求期限は離婚日によって異なり、2026年3月31日までに離婚が成立した場合は原則2年以内、2026年4月1日以降に離婚が成立した場合は原則5年以内です。離婚後に忘れずに手続きを行いましょう。
Q. 熟年離婚で後悔しやすい人の特徴は?
A: 後悔しやすい人の主な特徴として、①離婚後の具体的な生活設計を立てていなかった、②孤独になることへの準備ができていなかった、③感情的になって財産交渉を不利に進めた、④子どもや友人などのサポートネットワークを持っていなかった、⑤離婚を急ぎすぎて証拠収集や弁護士相談を怠ったといった点が挙げられます。逆に言えば、これらを事前に対策しておくことで後悔を大きく減らせます。
Q. 定年退職前と後、どちらで離婚すべき?
A: どちらにもメリット・デメリットがあります。定年退職前の離婚では退職金の金額が確定していないため交渉が複雑になる場合がありますが、財産分与の対象として退職金を含めた交渉ができます。定年退職後の離婚では退職金が支払われた後のため、現金として確実に分与できるメリットがあります。一般的には、退職金の受取後で財産の把握が明確になってから離婚手続きを進める方が有利なケースが多いです。個別事情によって異なるため、弁護士に相談して判断することをお勧めします。
Q. 相手が離婚に応じない場合はどうすればいい?
A: 相手が離婚を拒否する場合は、まず家庭裁判所への離婚調停申立が必要です。調停でも合意できない場合は、離婚裁判(訴訟)に進みます。裁判では民法第770条に定める法定離婚事由(不貞行為・悪意の遺棄・3年以上の生死不明・回復の見込みのない精神病・婚姻関係の著しい破綻)が認められれば、相手の同意なしに離婚が認められます(民法第770条)。長期間の別居(目安として5年以上)は婚姻関係の破綻の証拠として認められやすい傾向があります。
まとめ|60歳からの離婚を後悔しないために

60歳での離婚は、人生の大きな転換点です。残りの人生を自分らしく生きるための選択である一方、経済的・精神的リスクも伴います。
後悔しない離婚を実現するために、以下のポイントを必ず押さえてください。
- お金の準備を最優先に:財産分与・退職金・年金分割・慰謝料の全体像を把握し、離婚後の生活費シミュレーションを必ず行う
- 証拠収集と財産調査を離婚前に完了させる:切り出してからでは遅い。事前準備が交渉結果を大きく左右する
- 年金分割は期限内に必ず手続きする:離婚日が2026年3月31日までなら原則2年以内、2026年4月1日以降なら原則5年以内。期限を過ぎると取り返しがつかない
- 困ったら専門家(弁護士)に相談する:無料相談窓口を活用し、一人で抱え込まない
- 離婚後の生活設計(住まい・収入・健康・人間関係)を具体化する:新しい人生の設計図を描いてから踏み出す
60歳からの人生はまだ長く、適切な準備と判断があれば、離婚は苦しい終わりではなく、新たな人生の始まりとなります。
まずは一人で悩まず、法テラスや弁護士会の無料相談窓口に相談することから始めてみてください。


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