離婚後に元配偶者が亡くなった場合、「遺族年金はもらえるの?」と疑問を抱える方は少なくありません。特に子どもを抱えるシングルペアレントにとって、経済的な不安は切実です。結論から言えば、元配偶者本人は原則として受給できませんが、子どもは一定条件を満たせば受給可能です。この記事では、受給条件・金額の目安・申請手続きまでをわかりやすく解説します。
離婚後の遺族年金は誰がもらえる?受給権の結論

離婚後に元配偶者が死亡した場合、遺族年金を受け取れるかどうかは「誰が請求するか」によって大きく異なります。
遺族年金は、亡くなった方(被保険者)と法律上の婚姻関係または生計維持関係にあった遺族に支給される制度です。
離婚によって婚姻関係は消滅するため、元配偶者(元妻・元夫)本人は原則として受給権を失います。一方、離婚後も親子関係は続くため、子どもは条件次第で受給可能です。
参考:離婚後に遺族年金を受け取れるのは誰? | 公的保険アドバイザー協会
元配偶者本人は遺族年金を受給できない
離婚した元妻・元夫は、遺族基礎年金・遺族厚生年金のいずれも原則として受給できません。
たとえ婚姻期間が30年に及んでいたとしても、離婚した時点で法律上の配偶者ではなくなるため、受給資格が消滅します。
よくある誤解として、「長年婚姻していたから受給できるはず」「離婚直後だから権利が残っているはず」という考えがありますが、離婚していれば法律上の配偶者ではないため、婚姻期間の長さにかかわらず元配偶者本人は原則として受給できません。
参考:遺族年金請求ポイント 離婚後 | 遺族年金専門の社会保険労務士事務所
子どもは条件を満たせば受給できる
離婚後も親子関係は法律上継続します。そのため、亡くなった親(被保険者)の子どもは、一定の条件を満たせば遺族年金を受給できます。
主な受給要件は以下のとおりです。
- 子どもが18歳到達年度の末日(3月31日)までにあること(遺族基礎年金の場合)
- 障害等級1級・2級に該当する場合は20歳未満まで対象
- 亡くなった親が保険料納付要件を満たしていること
- 子どもが婚姻していないこと
なお、子どもが元配偶者(親権者)と生活している場合でも、亡くなった親の子どもとして受給権が発生します。
受給可否を判断する3つのチェックポイント
自分のケースで受給できるかどうかを簡単に判断するための3つのチェックポイントを紹介します。
- 請求者は誰か:元配偶者本人か、子どもか。子どもが未成年の場合は親権者が代理で請求することが多い。
- 子どもの年齢:18歳到達年度末日以前か(障害がある場合は20歳未満か)。
- 被保険者の保険料納付状況:死亡日の前日において、保険料納付済期間と免除期間の合計が加入期間の3分の2以上あるか(特例として、死亡日が2026年3月末日以前であれば、死亡日の前々月までの直近1年間に未納がないことでも可)。
この3点を確認することで、大まかな受給可否を判断できます。詳細は年金事務所に相談することをおすすめします。
遺族基礎年金と遺族厚生年金の違い

遺族年金には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類があります。それぞれ受給要件や金額が異なるため、違いを正確に理解することが重要です。
| 項目 | 遺族基礎年金 | 遺族厚生年金 |
|---|---|---|
| 対象となる被保険者 | 国民年金加入者 | 厚生年金加入者(会社員・公務員等) |
| 主な受給対象 | 子のある配偶者または子 | 配偶者・子・父母・孫・祖父母 |
| 年金額の基準 | 定額+子の加算 | 報酬比例部分の4分の3 |
遺族基礎年金の受給要件と金額の目安
遺族基礎年金は、国民年金の被保険者または老齢基礎年金の受給資格期間を満たした者が死亡した場合に支給されます。
受給できるのは、亡くなった方に生計を維持されていた「子のある配偶者」または「子」です。
離婚後の場合、元配偶者には受給権はありませんが、子ども自身が受給権者となります。子が複数いる場合は人数に応じて加算されます。
2026年度の年金額の目安は以下のとおりです。
- 基本額:約816,000円(年額)
- 子の加算:1人目・2人目 各約234,800円、3人目以降 各約78,300円
なお、保険料納付要件として、死亡日の前日において保険料納付済期間と免除期間の合計が加入期間の3分の2以上であることが必要です。
遺族厚生年金の受給要件と金額の目安
遺族厚生年金は、厚生年金保険の被保険者(主に会社員・公務員)が死亡した場合に支給される年金です。
受給対象は、亡くなった方に生計を維持されていた配偶者・子・父母・孫・祖父母で、優先順位があります。
離婚後の場合、子どもは(18歳到達年度末日まで、または障害等級1級・2級の20歳未満であれば)遺族厚生年金の受給対象になり得ますが、元配偶者本人は受給できません。
年金額の計算式は以下のとおりです。
- 報酬比例部分の年金額 × 4分の3
- 加入期間が短い場合(300月未満)は300月分として計算する「最低保証」あり
被保険者の標準報酬月額や加入期間によって異なりますが、月額5万〜15万円程度になるケースが多いです。
子どもが両方を受給できるケース
亡くなった親が厚生年金に加入していた場合、子どもは遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方を受給できる可能性があります。
両方を受給するには、以下の条件を満たす必要があります。
- 子どもが18歳到達年度末日以前(または障害がある場合は20歳未満)であること
- 亡くなった親が厚生年金保険料を一定期間以上納付していたこと
- 子どもが婚姻していないこと
亡くなった親が自営業者などで国民年金のみに加入していた場合は、遺族基礎年金のみとなります。
両方受給できるケースでは年間100万円を超える給付になる場合もあるため、受給権の確認は非常に重要です。
離婚後でも認められる「生計維持関係」とは

遺族年金を受給するためには、亡くなった被保険者と受給者の間に「生計維持関係」があったことが要件の一つです。
離婚した場合でも、例外的に生計維持関係が認められるケースがあります。特に子どもについては、離婚後も親子関係が継続するため、状況により生計維持関係が認められることがあります。
生計維持関係の2つの要件
生計維持関係として認められるには、以下の2つの要件を両方満たす必要があります。
- 生計同一要件:亡くなった被保険者と同一世帯に属していたか、または別居であっても継続的な仕送りや生活費の援助があったこと。
- 収入要件:受給者の前年の収入が850万円未満(または所得が655万5千円未満)であること。
子どもについては、通常収入要件を満たしているケースがほとんどです。また、亡くなった親から養育費を受け取っていた場合は生計同一要件も満たしやすくなります。
離婚後も生計維持関係が認められる具体例
離婚後でも生計維持関係が認められる代表的なケースを紹介します。
- 元夫から養育費を定期的に受け取っていた子ども:毎月3万〜10万円程度の養育費が振り込まれており、生活費の一部を担っていた場合。
- 同居していた場合:離婚後も同じ住所に住み続けていた子ども(住民票で確認できる場合)。
- 継続的な金銭的援助が確認できる場合:学費や医療費の負担、定期的な送金など、生活の維持に資する援助が記録で確認できる場合。
これらのケースでは、通帳の入出金記録や振込明細、領収書、やり取りの記録等の証拠を保管しておくことが重要です。
認められにくいケースと対処法
反対に、生計維持関係が認められにくいケースも存在します。
- 離婚後に一切連絡・金銭のやり取りがなかった場合
- 生活の維持につながる援助の事実を示す資料が乏しい場合
- 子どもが既婚者や高収入である場合
認められにくい場合の対処法として、社会保険労務士や弁護士に相談して申請内容を補強することが有効です。
また、養育費の支払いがなかった場合でも、学費・医療費の負担など実質的な援助があれば、それを証明できる資料を準備することで生計維持関係を主張できる余地があります。
【ケース別】離婚後の遺族年金はもらえる?もらえない?

実際の状況に応じて受給可否が異なります。以下に代表的なケースをまとめました。自分の状況に近いケースを参考にしてください。

離婚後に元夫が死亡し子どもが18歳未満の場合
このケースは子どもが遺族年金を受給できる可能性が最も高いケースです。
子どもが18歳到達年度の末日(その年の3月31日)を迎えていない場合、遺族基礎年金の受給要件を満たします。
元夫が会社員等の厚生年金加入者だった場合は、遺族厚生年金も合わせて受給できます。
注意点として、子どもを監護・養育している親権者(元妻)が代理で申請することになりますが、受給権者はあくまで子ども本人であり、元妻への給付ではありません。
離婚後に元夫が死亡し子どもが20歳以上の場合
子どもが18歳到達年度末日を過ぎている場合、遺族基礎年金は受給できません。
また、遺族厚生年金の「子」は原則として18歳到達年度末日まで(または障害等級1級・2級の20歳未満まで)とされているため、子どもが20歳以上(障害に該当しない場合)であれば、原則として遺族厚生年金も受給できません。
受給可否の判断は個別事情で変わることがあるため、不明点は年金事務所に確認することをおすすめします。
離婚後に自分が再婚している場合
元配偶者(元妻)が再婚していても、子どもの受給権には影響しません。子どもの受給権は親子関係に基づくものであり、親の再婚によって失われるものではないからです。
ただし、子ども自身が再婚した場合や、再婚相手と養子縁組をした場合などには受給権が消滅することがあります。
子どもが養子縁組をせず親権者の再婚相手と生活している場合でも、原則として亡くなった実親の子としての受給権は維持されます。
離婚調停中・裁判中に配偶者が死亡した場合
離婚調停中・裁判中はまだ法律上の婚姻関係が継続している状態です。そのため、配偶者が死亡した時点では正式な離婚は成立しておらず、法律上の配偶者として遺族年金の受給権が発生する可能性があります。
ただし、別居中で生計を別にしていた場合など、生計維持関係の要件を満たさない場合は受給が認められないこともあります。
このケースは状況が複雑なため、速やかに年金事務所または社会保険労務士に相談することを強くおすすめします。
内縁関係を解消後に相手が死亡した場合
内縁関係(事実婚)は、法律上の婚姻と同様に遺族年金の受給権が認められる場合があります。しかし、内縁関係を解消した後は、離婚と同様に原則として受給権がなくなります。
ただし、内縁関係中に生まれた子どもについては、認知されていれば法律上の子として受給権が認められます。
認知されていない子どもの場合は、遺族年金の受給が非常に困難になるため、生前の認知手続きが重要です。
参考:死後離婚後も遺族年金は受給可能?条件やメリット・デメリットを解説
養育費をもらっていなかった場合
養育費を受け取っていなかった場合でも、子どもの遺族年金受給権が失われるわけではありません。
ただし、生計維持関係の証明が難しくなる場合があります。
養育費がなくても、以下のような事実があれば生計維持関係を補強できます。
- 亡くなった親が学費・医療費などを負担していた領収書や記録
- 継続的な送金・援助が分かる通帳や振込明細
- 面会交流や援助のやり取りが分かる記録(写真・手紙・LINEのやり取りなど)
証明が難しい場合は、申告書に具体的な状況を詳しく記載し、可能な証拠を添付することが重要です。
子どもの遺族年金を申請する手続きと必要書類

子どもが遺族年金を受給するためには、正式な申請手続きを行う必要があります。受給は自動的に開始されないため、手続きを怠ると受給開始が遅れる場合があります。

申請先は年金事務所または市区町村役場
遺族基礎年金の申請は、お住まいの市区町村の国民年金担当窓口で行います。
遺族厚生年金の申請は、お近くの年金事務所(日本年金機構)で行います。
両方を申請する場合は、年金事務所で一括して手続きができます。不明な場合は日本年金機構の公式サイトまたは電話(0570-05-1165)で確認できます。
申請手続きの流れ【5ステップ】
遺族年金の申請は以下の5ステップで進めます。
- 死亡の事実を確認する:死亡診断書または死体検案書を取得します。
- 必要書類を収集する:戸籍謄本・住民票・年金手帳などを準備します。
- 申請書を入手・記載する:年金事務所または市区町村役場で「遺族年金裁定請求書」を取得し、必要事項を記入します。
- 申請書類を提出する:申請先窓口に必要書類一式を提出します。郵送も可能な場合があります。
- 審査・認定を待つ:審査期間は通常2〜3ヶ月程度です。認定後、指定口座に振り込まれます。
審査中に追加書類の提出を求められることがあるため、問い合わせに速やかに対応できるよう連絡先を明確にしておきましょう。
必要書類チェックリスト
申請に必要な書類は以下のとおりです。状況によって追加書類が必要になる場合があります。
- 遺族年金裁定請求書(年金事務所・市区町村役場で入手)
- 亡くなった方の年金手帳または基礎年金番号通知書
- 亡くなった方の戸籍謄本(死亡が記載されたもの)
- 亡くなった方の住民票の除票
- 請求者(子どもまたは代理人)の戸籍謄本
- 請求者の住民票
- 請求者名義の預金通帳またはキャッシュカードのコピー
- 死亡診断書のコピー
- 生計維持関係を証明する書類(養育費の振込明細、送金記録など)
- 離婚を証明する書類(離婚後の戸籍謄本)
書類に不足・不備があると手続きが遅延するため、事前に年金事務所に確認することをおすすめします。
申請期限は5年以内|遅れた場合の対処法
遺族年金の時効は5年です。亡くなった日の翌日から5年以内に申請しないと、時効が成立して受給権が消滅してしまいます。
ただし、申請が遅れた場合でも5年以内であれば、さかのぼって受給できます。亡くなってから時間が経過していても、まずは年金事務所に相談することを勧めます。
5年を超えてしまった場合は原則として時効が成立しますが、やむを得ない事情がある場合は特例措置が認められることもあるため、諦めずに相談してみてください。
離婚後の遺族年金で困ったときの相談窓口

遺族年金の手続きは複雑で、特に離婚後のケースは個別事情によって受給可否が大きく変わります。一人で判断せず、専門家や公的機関に相談することが重要です。
まずは無料相談を活用する
まずは以下の無料相談窓口を活用しましょう。
- 年金事務所:遺族年金に関する最も基本的な相談窓口。全国各地にあり、無料で相談できます。
- 市区町村の国民年金担当窓口:遺族基礎年金については市区町村でも相談可能です。
- ねんきんダイヤル(0570-05-1165):電話での相談も受け付けています(平日8:30〜17:15)。
- 法テラス(日本司法支援センター):経済的に余裕がない方向けに弁護士・司法書士への無料法律相談を紹介しています。
参考:遺族年金請求ポイント 離婚後 | 遺族年金専門の社会保険労務士事務所
専門家への相談を検討すべきケース
以下のような複雑なケースでは、社会保険労務士や弁護士への有料相談も検討してください。
- 養育費を受け取っておらず生計維持関係の証明が難しい場合
- 元配偶者が再婚しており受給関係が複雑な場合
- 申請が却下されて不服申立てを検討している場合
- 内縁関係の解消後に相手が死亡した場合
- 申請期限の5年が迫っている場合
社会保険労務士は年金手続きの専門家であり、特に遺族年金の請求代行を専門とする事務所も存在します。複雑なケースほど専門家のサポートが受給成功率を高めます。
離婚と遺族年金に関するよくある質問

離婚後の遺族年金について、よく寄せられる疑問をQ&A形式でまとめました。
離婚後何年経っても子どもは遺族年金をもらえる?
Q. 離婚後10年が経過していますが、元夫が亡くなりました。子どもは遺族年金をもらえますか?
A: 離婚からの経過年数は、子どもの遺族年金受給権に影響しません。離婚後何年経過していても、子どもが18歳到達年度末日以前(障害がある場合は20歳未満)であり、亡くなった親の保険料納付要件を満たしていれば受給できます。ただし、申請の時効(5年)がありますので、速やかに手続きをしてください。
養育費の取り決めがなかった場合はどうなる?
Q. 離婚時に養育費の取り決めをしていませんでした。子どもの遺族年金申請に影響しますか?
A: 養育費の取り決めがなかったこと自体は、受給権を失わせるものではありません。ただし、生計維持関係の証明において不利になる場合があります。学費・医療費の負担や送金記録など、生活の維持につながる援助の事実を示す資料をできるだけ集めて申請することが重要です。
元配偶者が再婚していた場合の子どもの受給権は?
Q. 亡くなった元夫は再婚していました。子どもの遺族年金受給権はどうなりますか?
A: 元夫が再婚していた場合でも、前婚の子どもが受給要件(年齢要件・生計維持関係など)を満たせば、子どもが遺族年金の対象になり得ます。実際の支給の扱いは世帯状況や手続きにより変わることがあるため、年金事務所で個別に確認してください。
遺族年金と児童扶養手当は両方もらえる?
Q. 遺族年金と児童扶養手当は同時に受給できますか?
A: 従来は遺族年金と児童扶養手当を同時受給できませんでしたが、法改正により2014年12月以降は、遺族年金の額が児童扶養手当の額を下回る場合、その差額分の児童扶養手当を受給できるようになりました。遺族年金の額が児童扶養手当の額を上回る場合は、児童扶養手当は支給されません。詳細はお住まいの市区町村の児童福祉担当窓口にご確認ください。
まとめ|離婚後の遺族年金で押さえるべきポイント

離婚後の遺族年金について、この記事で解説してきた内容を最後に整理します。
- 元配偶者本人は受給できない:離婚によって婚姻関係が消滅するため、元妻・元夫自身には遺族年金の受給権がありません。
- 子どもは条件次第で受給可能:18歳到達年度末日以前の子ども(障害がある場合は20歳未満)は、親子関係が継続しているため遺族年金を受給できます。
- 生計維持関係の証明が鍵:養育費の振込記録や学費負担など、生活の維持につながる援助の証拠を保管しておくことで、申請時の証明が容易になります。
- 申請期限は5年以内:時効に注意し、なるべく早く年金事務所に相談・申請を行いましょう。
- 複雑なケースは専門家へ:社会保険労務士や弁護士に相談することで、受給成功率が高まります。一人で悩まず、まずは無料相談窓口を活用しましょう。
子どもの将来のためにも、受給権があるかどうかを早期に確認し、適切な手続きを進めることが大切です。不明点があれば、日本年金機構の公式サイトや最寄りの年金事務所にご相談ください。


コメント